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意外とハマってしまう論理クイズ(小学生にもわかる解法つき)

つい昨日、こういうアンケートをTwitterでやってみました。

回答数は決して多くは無いですが、アンケート結果はだいたい想像していた通りのものになって面白かったので解説がてらブログを書こうかと。

結論から言うと、この問題の正しい回答は「風邪を引いている」となります。

なぜそうなるのでしょうか?

以下、大人向けの解法と子ども向けの解法でそれぞれ説明していきます。

大人向けの解法

問題文にある「Aさんが風邪を引いていないとき、Bさんは常に風邪を引いています」という文章は「Aさんが風邪を引いていないならば、Bさんは風邪を引いている」と言い換えられます。

  • Aさんが風邪を引いているをA
  • Bさんが風邪を引いているをB

と置くならば、この文章は

¬A⇒B

という命題を表しています。
(「¬」は否定の論理記号)

この命題の対偶をとるとこれは

¬B⇒A

となります。

これを日本語になおせば

「Bさんが風邪を引いていないならば、Aさんは風邪を引いている」

となります。

命題の真偽とその対偶の真偽は一致する」という法則があり、問題文にある通り命題は真なので対偶のこれも真となります。

したがって、問題にある「いま現在はBさんは風邪を引いていません。そのとき、Aさんはどういう状態でしょう?」に対する答えは「風邪を引いている」となります。

子ども向けの解法

命題とか対偶とかの言葉を抜きにこの答えを説明する方法もあります。

風邪を引いていないを○風邪を引いているを✗と置くと、AさんとBさんの取りうる状態は以下の4パターンしかありません。

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ここで、このパターン2は問題文の前半部分のことを示しています。

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そうすると、パターン1はパターン2と矛盾するためにこの状態であることは絶対にありえません。

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残る状態はパターン3とパターン4です。

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問題文の後半で聞いているのは「Bさんが風邪を引いていないとき」のことですのでここで見るべきはパターン3です。

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パターン3ではAさんは風邪を引いています。
言い換えれば、Bさんが風邪を引いていないときに取りうるAさんの状態は「風邪を引いている」状態しかありえないのです。

なぜこのような落とし穴にハマるのか?

先のTwitter上の回答では、多くの人が「どちらの場合もありうる」と回答していました。

直感として、その答えにたどり着いてしまうのは非常にわかります。
現実問題としては「Bさんが風邪を引いていないときにはAさんは風邪を引いている」と言い切れないような気もします。

しかし、この問題の回答としては「Bさんが風邪を引いていないときにはAさんは風邪を引いている」が正解なのです。


この齟齬はどこから生まれてきたものなのでしょうか?


実はその答えは簡単で、命題である「Aさんが風邪を引いていないならば、Bさんは風邪を引いている」が現実においては真になることは(ほぼ)ありえないからです。
つまり、この問題上では正しいとされているこの命題が間違っている、と。

これが「あるものが猫であればそれは植物ではない」という真偽がわかりやすい命題だったら「これは植物です。それは猫ですか?」という質問に対して「猫の場合もあるし猫でない場合もある」という答えにはならないでしょう。

こいつのことは忘れてください。
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仕事でも日常生活でも「○○ならば✕✕である」という言葉を使うことはあるとは思いますが、そこには注意が必要です。

少し専門的な話になりますが「AであればBである」という言葉は包括関係を表しており、かなり厳密です。
詳しくはこちら。
論理包含 - Wikipedia

「○○ならば✕✕である」という考え方を使う機会は多々あるとは思いますが、妙な落とし穴にハマらないようにその使い方には最大限に注意を払いましょう。


蛇足かも知れませんが、「○○ならば✕✕である」ということを検証するためにも、その対偶である「✕✕でなければ○○ではない」の真偽を一度考えてみる、という方法もあったりします。



最後に。
このクイズは別に私が考えたわけではなくて、小学生の頃に読んだこの本に載っていたような記憶があります。

当時はジャンル問わずブルーバックスの本をひたすらに読み漁っていたな……。

追記

似たような論理学ネタで昔こんな記事も書いてたらしい。
migi.hatenablog.com