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グロースをデザインするひと

FF16をクリアしました(ネタバレなしレビュー)

6/22にリリースされたファイナルファンタジー16をクリアしたので感想を残しておこうかと。
クリアまでにかかった時間は55時間。
サブクエスト、リスキーモブはコンプリート済み。


総評

結論から先にいうと大満足な作品でした。
めちゃくちゃ面白い。めちゃくちゃ面白いしめちゃくちゃ出来が良いという印象。
細かく気になるところはなくはないですが、出来が良すぎてそのあたりを気にせずに満点をあげたいレベル。

「FFシリーズで好きな作品は?」と聞かれたときに、これまでは3や6を挙げてましたが、それは多分に思い出補正に依ったもので。いまプレイして最近のゲームと比肩して面白いかは難しいところでした。
そんな中でも今作はためらいなく「FFシリーズで好きな作品」と言える出来なのがスゴい。思い出補正に依らずとも、しっかりと「面白い」と言える内容でした。

あと、プレイ体験が濃い。数時間プレイしただけでも満足感がスゴい。
「もう40時間ぐらいプレイしてるかなー」と思ったタイミングで実際は20時間しかプレイしてなかったときは絶句しました。

シナリオ

人が人として生きられる世界

メインテーマは「人として生きること」。

この重たい話をしっかりと描きつつもちゃんと「ファイナルファンタジー」になっていたと個人的には思います。
主人公が■■■■と呼ばれ、その後■■■と呼ばれるあたりの流れも含めて全体的に『女神転生』っぽさもありましたが。

兄弟愛

自分自身が実兄と没交渉なこともあって兄弟ものの作品はあまり得意ではないですが、それでもウルッと来るシーンも。
展開が良い。

サブクエス

また、メインシナリオだけでなくサブクエストも良くできていたかと。
(100%すべてではないですが)そのほとんどが世界観・世界設定の補完のために作られていたように思えます。報酬も美味しくないし別にプレイしなくても良いんだろうけど、プレイすることでよりこの世界のことがわかるようになっていてそれを目的に楽しめました。

終盤の大量のサブクエストには面食らいましたが、どれも良い話。ほぼ本編。ぜひプレイしてほしい。

ちなみに、一番好きだったサブクエストはムーア村のクロエのクエスト。
ベタではあるけど、その近くにあった貴族のクエストと合わせて「この世界の当たり前」を感じられて素晴らしかったと思います。

システム

全般

全体的に最近のAAAタイトルのトレンドが組み込まれていて、要らないストレスを感じる箇所はほとんどありませんでした。

FF14を復活させるために吉田直樹さんが開発メンバーに対してまず「MMOとして人気があるゲームとはどういうものかを学ばせることを目的にWorld of Warcraftをプレイさせた」という話が大好きで、今回も開発開始時に似たような手法を用いたそうで。

www.asahi.com


そのあたりもあってか非常に良くできたものになっていたように思えます。

アクティブタイムロア

任意のタイミングで、今現在のストーリーに関係する用語を調べられる機能。

みんな言っていますが今後のストーリー重視のゲームでは必須になりそうなぐらい良い発明でした。

登場人物も多く、国家間の勢力争いの要素が大きいストーリーの中、これプラスにハルポクラテスとヴィヴィアンの機能は助かりました。

ゲームだけでなく、海外ドラマを観ているときにもどうにかして同じ機能が欲しくなってしまう。
Netflixの『Dark』を観ているときにこの機能が欲しかった……。

ミニマップ

発売前から問題になってましたが、個人的にはなしで良かったかな、と。
吉田さんの言う「ミニマップがあるとそちらを注視しちゃって風景やキャラを見なくなる」という話は、つい最近プレイしていた別のゲームで本当にその状態になってしまっていたのでかなり納得で。*1

バトルデザイン

全般

アクションRPG」というとアクション要素が半端に組み込まれていて微妙な思いをすることが多いのですが、今作はしっかりと楽しめましたね。
前々から「RPGにおいて通常戦闘の楽しさは重要」とよく言っていますが、今作もそうで。
ストーリー後半のとある場所でのザコ戦ラッシュもめっちゃ楽しかった。

ただ楽しすぎる弊害として、敵の増援のカットシーンが入ったときにシナリオ的には「マズい!囲まれた!」って感じなのにプレイヤーの心情的には「やった!またいっぱい戦えるぞ!」となってしまったり。

基本システム

カプコンで『Devil May Cry 5』を手掛けた鈴木良太さんがいつの間にかスクエニに入社されていて、今作のバトルデザインを手掛けられたと聞いた瞬間にほぼ勝ち確でしたね。

ランジ(剣を用いた突進技)のモーションや性能がまんまDMCのそれ過ぎて笑う。
空中コンボも。ガルーダのフィートもDMCで見たやつ。
召喚獣の力を複数セットできるようになって切り替えながら戦う感じになってからはさらにそれっぽく。

全体のゲームデザイン上、あえて入れなかったという可能性もありませんが、DMCシリーズで言うスタイリッシュランクのような仕様があればさらに良かったかもな、とは思います。

DMCでは敵に攻撃を繰り出すと画面上にこのスタイリッシュランクが表示され、その評価が上がるごとに下記のD〜Sが表示されます。

  • D: Dull
  • C: Cool!
  • B: Bravo!
  • A: Absolute!
  • S: Stylish!

このランクを上げるためには「ダメージを食らわない」「挑発をおこなう」の他に「同じ技ばかりを繰り返さず様々な種類の攻撃をおこなう」というものがあります。
これにより、ただただ強い攻撃だけを繰り返すだけでなく複数種類の攻撃方法を組み合わせて使う必要があり、その結果「誰に見せるわけでもないのに勝手に魅せプレイみたいになる」というユーザ行動が生まれていました。

今作では、似たような仕様はなくはないようですが通常のプレイではあまり気にすることも無い感じで。(アレテストーンのアーケードモードでは関係ある?)

せっかくアクションが楽しいので「スタイリッシュランクによって取得経験値・取得アビリティポイントが変化する」のような仕様があっても良かったかなとも思います。ちょっとアクション寄りになりすぎるので実装しなかった、という選択もありそうですが。


DMCまわりでさらにいえば、通常コンボにディレイ要素があればさらに楽しめたようにも思います。
「□→□→□→□」とのコンボとは別に「□→□→ちょっと待ってから→□→□」や「□→□→□→ちょっと待ってから→□」でコンボが変化するDMCの仕様がけっこう好きで。
しかし、こちらも過度にアクションに寄らせないためにあえて実装しなかったやつかも。

召喚獣バトル

通常のバトルデザインの流れの話としては、召喚獣バトルも良かったですね。
ゲームの歴史の中で悪名高いQTEも、これだけ演出が良ければ問題ないんだ、と。むしろQTEが正解の形なのかと。

どの召喚獣バトルもスゴい演出で熱い展開ですが、対バハムート戦なんか特に熱い。
ベタな流れといえばベタな流れですが「この展開を見るためにこのゲームをやってたんだ!」という気持ちにさせてくれました。

難易度

序盤はまだシステムに慣れていない上に戦術の幅も狭いので「やばい!ポーションがカツカツだ!」となっていましたが、後半はポーションを使うこともほぼなくなってしまってましたね。シヴァのフィート強すぎ

それでもバトルの手触りが良いので爽快感もあって楽しかったですが。

手に汗握るギリギリの戦闘を楽しめたのはリスキーモブのスヴァローグぐらいかも。敵の攻撃を覚えてそれを見切りながら戦うの楽しかった。そもそも敵のレベルは50なのにこっちは39しかなかったし。

そういう体験をもうちょっとしたかったけど、それは2週目とかスコアアタックでってことなのかな。

その他

音楽

祖堅さん最高すぎる。
自分の下記ツイートがすべて。


拠点やフィールドの自然に背景に馴染むBGMも最高だし、盛り上がりどころで思いっきり前面に出てくる熱いBGMも最高だし。

あと、オリジナル曲ももちろん良いですが、要所要所で入るFFのテーマとプレリュードのアレンジも素晴らしく。
ファイナルファンタジーをプレイしている気持ちにさせてくれますね。

キャラクター

今回のシド、大好きすぎる。
過去のFFシリーズのシドで一番好きかも。

あと、声優さんも含めて拠点のカローンがなんかめっちゃ良い。
いじわるばあさんのような雰囲気を醸し出しつつも実は良い人キャラ。

カローンのサブクエストも好き。


ドイツ語音声でのプレイ

上記の動画もそうですが、私は今作をドイツ語音声でプレイしていました。

体験版を始めるときに「最近ドイツ語を再勉強しているし試しにやってみるか」と思ったのがきっかけ。
これが個人的には大当たりで、結局本編もクリアまでずっとドイツ語音声でやってました。

そもそも舞台が中世ヨーロッパに近い世界なので、ドイツ語が雰囲気にマッチしていたというのが1つの理由。

そしてもう1つの理由としては「ドイツ語音声と日本語字幕とで内容が違う」ことがかなり多かった、ということ。

端的な例の1つとしては、とあるベアラー(奴隷)にパンやワインを与えるシーン。
字幕では「パンとワイン、ありがとう」と書いてあるのに音声では「Danke für alles. 」と言ってて、「実際にもらったものだけでなく、それ以上に話を聞いてあげたりちゃんと人として接したことにも感謝しているんだろうな」と思えたり。

他にも、日本語字幕では主語がない場面で、そのときの音声の主語が「オレ」じゃなくて「オレたち」でちょっとウルッときたり。

「というか、そもそもぜんぜん違うこと言ってるじゃん」みたいな箇所もあったり。

これを一番感じたのは、ゲーム内でも特に盛り上がるとあるシーン。
ドイツ語音声では「オレはロザリアの盾(騎士)だ!*2と叫ぶめちゃくちゃ胸アツなシーンなのに、日本語字幕は「とどめを刺す気か!?」としか書いてなくてなんかもったいなく感じました。

上記のシナリオのところで書いたクロエのサブクエストでも、クロエが○○であることに気づく流れが日本語字幕とドイツ語音声とで全然違ってましたね。


そんなこんなで、日本語字幕とドイツ語音声とでストーリーを2倍楽しめたようにも思えます。

まとめ

一部ゲームメディアで酷評されているものも見ましたが、個人的にはそこで言われていることほぼすべてに逐一反論したいほどに良い作品だったと思います。

アクション要素として「クリアしてからが本番」らしいですがまだやっていないのでそのあたりもやらねばな。


吉田直樹さん&第三開発事業本部をはじめスタッフの皆様、本当に良い作品を作ってくれて本当にありがとうございました。

*1:『Diablo4』のこと。マップ上に「リリスの像」というものが点在していてそれを調べるとメリットがあるのに、移動中は基本的にずっとミニマップを見ているのでクリアするまで自力ではほとんど見つけられず。クリア後に攻略情報を見て探し回ったけど「こんなにもオレは風景とキャラを見てなかったのか」と驚かされた。

*2:ドイツ語音声では本編中ずっと「騎士」のことを「盾(Schild)」と言ってた。「ロザリアの騎士」は「Rosalias Schild」もしくは「Schild von Rosalia」。