読書記録 2023年上半期
とんとブログを書かなくなって昔みたいに読んだ本の感想もしっかり書かなくなったけど、Twitterでは短い感想を呟いていたのでせっかくなのでまとめておこうかと。
特に印象に残っている作品・作家
ローラン・ビネ
この上半期で一番大きいのは『文明交錯』でローラン・ビネのことを知ったこと。『HHhH』『言語の七番目の機能』と合わせて一気にファンに。
『文明交錯』はインカ帝国「が」ヨーロッパを征服する話。
『HHhH プラハ、1942年』はナチス高官暗殺事件を追う話。
『言語の七番目の機能』は1980年前後の実在の思想家がめっちゃ出てくる記号学ミステリ。
どれも、歴史考証や資料探索が異常なレベルでしっかりしているのがわかる。
今後の作品にも期待。
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』
単純に作品として一番インパクトが大きかったのはこちら。めっちゃ騙された。
Tweetでも書いてあるけど「読んだ後の余韻が凄すぎて眠れない」のはなかなかにない体験だったな。
『僕は美しいひとを食べた』
『将太の寿司』の寺沢大介さんの下記Tweetをきっかけに読んだ本。
これ自体がカニバリズム文学ではあるが、今後別のカニバリズム文学を読む際にこの本を読んだことでより深く読めるような気がする。そんな作品。
『僕は美しいひとを食べた』(チェンティグローリア公爵/大野露井訳 彩流社)を読みました。筋立ては表題の通りで、ほかに何も事件らしいことは起こりません。本文の大半は古今東西の食人風習の歴史の蘊蓄。「本筋に関係のない話が多すぎる」という批判がありましたがいや、そっちの方が眼目ですよね。 pic.twitter.com/bfbV0oraEs
— 寺沢大介 (@anagono_oishii) 2023年1月20日
Tweetまとめ
『三体0 球状閃電』読了。
— みぎ (@migi) 2023年1月4日
話のスケールでは本編に負けるが、コンパクトに面白かった。『プロジェクトヘイルメアリー』なみに話の展開が良くて、朝までぶっ続けで読んでしまったほど。
ストーリー的には9割9分は『三体』と関係なし。丁儀はめっちゃ出てくる。丁儀好き。https://t.co/hUUdXDWknT
『方舟』読了。嫁にオススメされて。
— みぎ (@migi) 2023年1月7日
「誰か一人犠牲になれば脱出できる」というシチュエーションを聞いたときはデスゲームっぽくていまいちだなと思ったけど、蓋を開けてみればまっとうなクローズドサークルものとして楽しめた。結末のおかげで良い余韻が残る。https://t.co/uB9aRvmlrn
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』読了。
— みぎ (@migi) 2023年1月10日
タイトルを見て自分が好きなノリじゃないだろうなと思っていたが、ハウダニットものとしてかなり秀逸だった。やられた。
読み進める中でモヤッとする所はあるかと思うが、ぜひ最後まで読んでほしい作品。この↓状態になりたい人はぜひ。https://t.co/e5NzYjqVAq
『名探偵のはらわた』読了。
— みぎ (@migi) 2023年1月10日
『名探偵のいけにえ』が良かったのでこちらも読んでみたけど個人的には凡作。ミステリとしても物語としてもいけにえの方が洗練されてた。https://t.co/tWm5kmoMed
『invert』『invert Ⅱ』読了。『medium』の続編。
— みぎ (@migi) 2023年1月12日
倒叙ミステリとして充分に読めるし質も高いとは思うが、一作目のインパクトが強すぎてそれに比べるとどうしても物足りなく感じてしまう。が、面白い。https://t.co/Ho9icJvzRi
これを見て『花束は毒』さっそく読了。
— みぎ (@migi) 2023年1月14日
本当に嫌な話だった。好き。話の展開のさせ方とかミステリとしてとかで言うとそこまでではないが、好き。 https://t.co/HTi2MIRJ9a
『爆弾』読了。
— みぎ (@migi) 2023年1月14日
「このミス」「ミステリを読みたい」ともに1位と評判が良いらしく読んでみたけど、オレが求めているミステリではなかったな、という印象。警察モノとしては楽しめたけど。https://t.co/Wy23oxEld9
『教養としての精神医学』読了。大学のサークルの先輩の本。
— みぎ (@migi) 2023年2月9日
タイトル通り(DSM-5に準拠した最新の)精神医学の基本の部分について網羅的に触れられている。
精神科医(と公認心理師・臨床心理士)が何を範疇としているのかがわかって良き。https://t.co/LnVnw98ZwA
『僕は美しいひとを食べた』読了。
— みぎ (@migi) 2023年2月9日
「間男が夫にその嫁をいかにして食べるに至ったかを語る」という話の中で、古今東西の食人に関する小咄が次々と語られる、という構成。
耽美。好き。https://t.co/JiS7THZwwl
芦花公園『ぱらいそのどん底』読了。本人が「BL書いてたらホラーになった」的なことを言っていて警戒していたんだけど良いホラー小説だった。
— みぎ (@migi) 2023年3月13日
芦花公園の本を一冊勧めるときにこれまでは『ほねがらみ』や『異端の祝祭』を挙げていたけど次からは本作をオススメしたい。https://t.co/JK0l4S2ugC
ついでに芦花公園さんが良いカニバリズム文学だとおすすめしていたヰ坂暁『舌の上の君』も読了。
— みぎ (@migi) 2023年3月13日
レーベル的に不安だったけど小説としてちゃんと読めた。良い恋愛ものだし、良い料理ものだし、良い異世界転生もの。そしてしっかりとホラー小説。
ところどころ文が輝いて見えるほど描写が美しい。 https://t.co/acDrCziUCX
『我々は、みな孤独である』読了。久しぶりの貴志祐介長編。
— みぎ (@migi) 2023年3月15日
ノワール小説、怪談、SF等いろいろな要素がありつつ1本の小説としてうまくまとまっている。が、やはり『新世界より』が名作過ぎてそれを超えるものがなかなかでてこないのはやはりちょっと不満。良い本だけど貴志祐介作品としては並。
綾辻行人『人間じゃない〈完全版〉』読了。未発表作品集。
— みぎ (@migi) 2023年3月17日
『崩壊の前日』良き。綾辻さんのミステリー作品は好きだけど怪奇小説方向のがより好きなんだよなー。『眼球綺譚』を読み直したくなった。
別途、メタフィクション方向の作品で小野不由美さんとの仲睦まじい姿を見るのはそれはそれで好き。
芦沢央『汚れた手をそこで拭かない』読了。
— みぎ (@migi) 2023年3月17日
日常の謎系の短編集。どれも胸クソ悪い。どれも後味悪い。ステキ。『忘却』が特にグッとくる。
芦沢央作品を読むのは初めてだったけど好きな作家さんかも知れない。他の作品も読んでみよう。https://t.co/A1j0lLyTxH
綾辻行人『深泥丘奇談』『同・続』『同・続々』読了。
— みぎ (@migi) 2023年3月20日
怪談短編集。個人的に傑作ではないが、ライトにいろんな作品を読めてなかなかに面白かった。設定と登場人物も良き。
綾辻行人『水車館の殺人』『迷路館の殺人』読了。
— みぎ (@migi) 2023年3月22日
館シリーズはなぜか『十角館の殺人』しか読んでなかったけどこちらも楽しめた。
『迷路館』は後書きにもあったけど本人がノリノリで書いたんだろうなーってのが伝わってきてこっちも読んでてワクワク。
澤村伊智『さえづちの眼』読了。
— みぎ (@migi) 2023年3月22日
比嘉姉妹シリーズ最新作の短編集。前作の『ばくうどの悪夢』が一作目『ぼぎわんが来る』を超えるレベルで面白かったのでそれに比べるとちょっと劣るけどそれでも面白い。澤村伊智作品は何作読んでも作中のトリックに騙されてしまうのズルい。
綾辻行人『人形館の殺人』『時計館の殺人』『黒猫館の殺人』読了。
— みぎ (@migi) 2023年4月10日
人形館、時計館はオチまでわかってしまったが、黒猫館のオチは度肝を抜かれた。作中で「8割はわかったが残り2割が重要」みたいなセリフがあったが、読んでる身からしてもそのまんまでやられた感がある。
『文明交錯』読了。インカ帝国がスペインを侵略するという歴史改変小説。
— みぎ (@migi) 2023年4月29日
ただ単に攻め込みました!ではなくてそこに至る過程とヨーロッパの覇者となる過程が史実上の人物・出来事とともに丁寧に書かれていて面白い。
「読むCivilization」とはよく言ったものだ。https://t.co/Ch6qHN4S5z
ローラン・ビネ『言語の七番目の機能』読了。
— みぎ (@migi) 2023年5月21日
「ロラン・バルトの事故は実は暗殺だった」から始まる、記号学を軸にしたサスペンス。
20世紀後半のフランスの実在の思想家が大量に出てくる。学が足りんので「あれ?この人なんだったっけ?」とめっちゃググりながら読んだ。https://t.co/GAAFExowiD
『ヴァケーション~異形コレクションLV~』読了。好みの作家さんが参加しまくっていたので久しぶりに異形コレクションを買ってみた。
— みぎ (@migi) 2023年5月28日
空木春宵さん作品が個人的には一番ヒット。大好きな世界観&大好きな雰囲気。次の短編集も準備中とのことで楽しみすぎる。https://t.co/kiPKAlOI3W
新名智『あさとほ』『きみはサイコロを振らない』読了。
— みぎ (@migi) 2023年5月31日
横溝正史ミステリ&ホラー大賞を受賞した『虚魚』でデビューした作家さんの長編がいつの間にか2本も出てたので読んでみた。
相変わらずキャラクター設定や話の転がし方が上手い。冒頭部分から引き込まれてそのまま最後まで一気に読んでしまった。
篠たまき『やみ窓』読了。
— みぎ (@migi) 2023年6月1日
異形コレクション『ヴァケーション』で良作を書かれていて気になって読んでみた。「女流作家ならでは」という言い方はあまり好きではないのだけど、ホラーのなかにある物悲しさがとても良い味を出している。静謐の中にある怖さ、とでも言うか。https://t.co/vJWj3G3isg
佐藤究『QJKJQ』読了。
— みぎ (@migi) 2023年6月1日
『テスカトリポカ』も良い作品だったけど、こちらの作品や『Ank』のほうが好きかも。冒頭は「う〜ん、この設定はどうだろう……」と思ったが話の展開の中でそれも回収され、良いミステリとなっていた。今月また長編が新しく出るらしいので楽しみ。https://t.co/t8txG1jCLl
『爆発物処理班の遭遇したスピン』読了。佐藤究の短編集。
— みぎ (@migi) 2023年6月15日
直木賞受賞の『テスカトリポカ』のようなノワール小説だけでなく、実はSFやミステリも得意ということがよく分かる。他2作の長編はまさにSFとミステリなので、これ読んで気に入ったらぜひ。https://t.co/zrep4Jsvx2
『HHhH プラハ、1942年』読了。ちょっと前に読んだけど感想書いてなかった。
— みぎ (@migi) 2023年6月15日
実際にあったナチス高官暗殺事件を追う話。事件についての話が半分、「歴史小説を書くとはどういうことか」というメタフィクション的な要素が半分。読み応えがすごい、そのうえ面白い。https://t.co/kJMrgz7SXn
『アトラス6』上下巻読了。こちらも感想書いてなかった。
— みぎ (@migi) 2023年6月15日
世界中で絶賛されているとのことで読んでみたけど個人的にはいまいち。文体のラノベっぽさが強くて読み進めるのがけっこう辛かった。ドラマ化予定らしいのでこの感じであれば小説じゃなくそっちを観れば良いかなと。https://t.co/ehItcLNILx
斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』読了。
— みぎ (@migi) 2023年6月16日
作中の設定だけは前から聞いていてNot For Meだと思っていたけど、こないだの異形コレクションの中の短編の雰囲気が良かったので読んでみた。
ミステリとして普通に楽しめたし「探偵とはどうあるべき存在か」という問いが良い。https://t.co/PhcdhBAqeT
斜線堂有紀『回樹』読了。短編集。
— みぎ (@migi) 2023年6月16日
ワンアイディアを膨らませて物語るのが得意な作家さんなだなと再確認。長編より短編のほうが好きかも。
特に「恋人の死体を盗んだ女性」の取り調べから始まる表題作はけっこうな感じで僕の心にクリティカルヒット。https://t.co/prIsiSBHLp
芦花公園『聖者の落角』再読了。発売直後に読んでたけど意味が取りづらいところが多かったので再読。
— みぎ (@migi) 2023年6月21日
シリーズ3作目。たぶん単品で読んでもピンと来ず前作・前々作を読まずにこれ読むのは辛いかと。そして読んでても個人的には前作・前々作のほうが好きかも。https://t.co/OTucjC3nXS