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グロースをデザインするひと

『真・女神転生3-2』としての『真・女神転生5』

先週発売された『真・女神転生V』をクリアしました。
プレイ時間は50時間弱。

前作もクリア後にレビュー記事を書いていたようなので今回も書いておこうかと。
migi.hatenablog.com

前回に引き続き、システム・シナリオ・世界観の3つの視点から感想を書いていきます。

システム

成長要素

まず何よりも過去最高に仲魔のビルドがやりやすかったですね。
『ペルソナ』等の派生シリーズも含め。

「写せ身」のおかげで悪魔合体後もスキルをいじり放題。
悪魔固有の弱点もこれで簡単に潰せちゃう。

たまに手に入る「魔道書」のおかげで主人公と同じレベルまではレベル上げ放題ですし。

これによって「好きな悪魔を最後まで連れていけるぜ!」とテンション上がっていたんですが、これが完全な罠でした。。


それは悪魔固有のステータスとして今回追加された「スキル適正」の重要さに後半になるにつれて気づいてしまったため。


今作では各属性の得手不得手を表現するために「スキル適正」というステータスが用意されていて、それによってスキルの威力が変わったり消費MPが変わったりして。

上記のようにスキルは好きに入れ替えできるし、弱点も潰せるしでそこはいくらでもカバーは効くのですが、この「スキル適正」はほぼどうすることもできず。
スキル適性がプラスであれば貴重な消費アイテムを使ってそれを更に上げることは可能だけど、マイナスを潰すことも、0の値を変えることもできず。


プレイ中の悲しい思い出としては、大好きなアリス様を仲魔にしてからは香も全部ブチ込んで大切に育ててたんですよ。
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固有スキルの「死んでくれる?」も相変わらず強いし終盤手前ぐらいまでずっと大活躍し続けてくれてめちゃくちゃ良い旅だったんですが、いかんせんスキル適正のステータスが弱すぎて。呪殺と状態異常以外は適正なし。呪殺スキルと状態異常スキル以外はMPの消費が大きい上に威力もそこそこレベル。

終盤で仲魔になったメフィストフェレスが完全上位互換っぽい感じだったので涙を飲んで入れ替わってもらいました。
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かわいい女の子と隣同士連れ添って旅をしてたのに、それがいきなりうさんくさいおっさんに。辛み。


とはいえ、そのあたりも含めて成長要素については今作は過去最高に良いできだったんじゃないかと。
悪魔固有のスキルが低レベルのころからけっこうな割合で存在していたのも楽しかったですね。

マップ探索

正直に言って「女神転生シリーズにアクション要素は要らんよな……。」というのがシンプルな感想だったりします。

「あの高いところに宝箱が見えるけどどうやって行けば良いんだ?」とか悩むのはアサシンクリードシリーズの劣化コピーにしかならないだろうし。


ただ、こちらの記事で述べられているこの内容にはかなり頷ける部分もあります。

news.denfaminicogamer.jp

私なりの考えを述べるのであれば、品川コンコースという場所は、そこにいる人間の行動の自由を著しく奪う場である。あの場にいる人間は基本的には目の前の通路をただただ前に進むことしか許されていない。
(中略)
砂漠化し、荒廃してこそいるが、「ダアト」での行動は至って快適だ。軽快で特にスタミナやゲージの制限などのないダッシュ移動、それなりの段差でも飛び越えられるジャンプ

現代社会における束縛された人間の行動との対比としてのマップでのアクション要素、というのは良い考え方だなと。


また、マップに点在する「ミマン」と呼ばれる存在を探していくコンテンツもアクション要素と同じく「アサクリでいいよ」という気分でしたが、見つけたときのテキストがけっこうよくできていてそれを楽しみに集めることができました。

見つけたときのテキストは大きく分けて次の3つ。

  • ほぼ無意味なテキスト(おつかれさま、よく見つけたな等)
  • その土地の豆知識(銀座という街の由来は……等)
  • ミマンの存在理由を匂わせるテキスト

土地の豆知識の話ももちろん面白いんですが、3つめの世界観に繋がるテキストの出来が個人的にはかなりよくできていたように思えます。

極端な言い方をすると、ビックリマンで各キャラのシール裏のテキストの集積が一つの大きな世界観に繋がっているのと似たようなようなイメージ。

断片的な情報が徐々に集まっていく中で「こいつらってもしかして!?」となった瞬間はけっこう気持ちよかったですね。

バトル

特に可もなく不可もなく。
あいかわらずプレスターンバトルは素晴らしい。
ずっと言っていますが、アクティブタイムバトルに並ぶJRPGの発明の一つだと思います。

新要素のマガツヒスキルについては、序盤にMAX時に毎ターンMP回復の神意をゲットしてからはほとんど使っておらず。
探索中にMPが枯渇することが多いゲームなので、この効果が本当に便利で。
いつもなら「勝利のチャクラ」等にスキルを一枠割いていたのですが、今回はこれのおかげでMP不足はあまり困らず。
終盤で「エナジードレイン」をメイン全員に配れてからはボス戦では「至高の魔弾・改」をたまに打ったりしましたが。


一点だけ不満点を述べるのなら、冒頭で挙げた前作『真・女神転生4 FINAL』のラスボス戦では女神転生の世界観のキモとなる部分とプレスターンバトルを絡めてめちゃくちゃ面白いものになっていたのにそれを超えるものが(というか並ぶものも)無かったのが残念ではありました。

そこの手応えも含めて、ラスボスがかなり弱かったのも残念。

人修羅とシヴァをまだ倒せてないのでそこはやらなきゃですが。

シナリオ

一周目のエンディングは「破壊」エンド的なやつでした。
多分一番アレなやつ。

途中でヒロインはいなくなっちゃうし「結局お前は何なんだよ!?」みたいなやつも残っているしで、他のエンディングも見なきゃなんともなところではあります。


とりあえず現時点では個人的にはここも可もなく不可もなく、という感じかと。
序盤から「登場人物の心の動きがわからん」とか「なんでそこでそんなリアクションをするんだ?」と思うこともありましたが、それでこそメガテンだとも言えるし。


ただし、ラストダンジョンに入ってからアオガミがまったく喋らなくなったのは謎。

世界観

今回はアレですね。完全に『真・女神転生3』の流れですね。
作中でよく語られる「約20年前」「18年前」も『真・女神転生3』のタイミングだし。

冒頭の『真・女神転生4 FINAL』のレビューで私はこんなことを書いていたようです。

しかし、ここまで描いてしまったらペルソナなどの派生系作品ならともかく「真女神転生」のナンバリングはこれ以上は難しいんじゃなかろうか。
今作のタイトルの「FINAL」はもしかしたらそういう意味なのかも知れませんな。

いや。本当にこれ。


そもそも『真・女神転生3』がそれまでの女神転生シリーズとは世界観設定としては一線を画していて、今回もその流れだなと。

むしろナンバリングタイトルじゃない『真・女神転生SJ』のほうが本シリーズに近い。
真・女神転生3』と今作は『デビルサマナー』や『デジタルデビルサーガ』や『ペルソナ』等の別シリーズでも良かったんじゃないかと思うほど。

真・女神転生3』ではこれまで描かれてきた「LAWとCHAOSの対決」は描かれずに違う軸での争いになってましたが、今回もそんな感じ。

「LAW側が争い合う」という視点は面白かったですが。
(クリア後にネットを見ててイチロウがLAW、ユヅルがCHAOSという話もあったけど、個人的にはそれは違うような気がしています。)


そういえば、ヤハウェはともかくルシファーまで登場しなかったのはかなり珍しい気が。話にはいっぱい出てくるけど。
そのあたりが不在の状態で女神転生を描けるのか?みたいな試みだった、というのもありそうな。


まぁしかし、『真・女神転生4 FINAL』がメガテンシリーズの世界観の根幹に関わる内容を描きまくっていたので、そういう意味だと前作に見劣りしてしまうというのが正直な感想です。

FFX-2』みたいな感じで、本作は実質『真・女神転生3-2』なのかもしれません。

全体として

Nintendo Switch本体お披露目の発表会でティザー映像が公開されてから4年半待ち続けてようやくプレイできた今作。

長らく待った甲斐がありました。
ゲーム全体として高レベルで仕上がっていると思います。
個人的にはここ数年でプレイしたシングルプレイゲームの中でもかなり上位かと。

何よりメガテンシリーズの新作をプレイできるだけでも嬉しいですし。


ゲームデザインとしては過去最高の『女神転生』でした。

ただ『真・女神転生4 FINAL』の世界観の描写が素晴らしかったがためにそれ以上を期待してしまう自分もいたりして。
「これ以上はない」と思わせた『真・女神転生4 FINAL』を超えるメガテンがリリースされることを待ち続けたいなと。