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グロースをデザインするひと

グロースのことについて語るときに僕の語ること

growth

私はグッドパッチにおいてシニアグロースデザイナーという肩書で働いており、他のメンバーからよくグロースまわりの質問を受けます。
「CVRを上げたい」「アプリの継続率が悪いのでどうにかしたい」など、質問の内容は多岐にわたりますが、だいたいは「ユーザが思うように行動してくれない」という点に収束します。

これらの課題の解決策を考える上で、私がよく話していることについて記事としてまとめておきたいと思います。

と言っても、下記もろもろは株式会社グッドパッチとしての考え方ではなく、あくまでも私自身の考え方なので悪しからず。

課題の根源にあるもの

ユーザが思うように行動してくれないとき、一番最初に考えるべきことはなんでしょうか?
私はこのようなたとえ話をよくしています。

あるサービスに登録してくれたユーザ全員に対して「翌日も来てくれたら100万円あげますよ」という施策をおこなったとしたら、翌日継続率はほぼ100%になるよね。

上記は極論すぎるかも知れませんが、ここで私が言いたいことは「ユーザにとっての明確なメリットがあれば、ユーザは行動してくれる」ということです。

「重要性」の重要性

違う言葉で言い換えるなら、これは「ユーザがそれを行うことの重要性を認識していれば、その行動をしてくれる」ということになります。

ちょっと長くなりますが、私が学生時代に聞いたダンサーの平山素子先生のエピソードを紹介させてください。

彼女は筑波大学で体育の授業も受け持っており、課題のレポートを出さない/遅れて出す生徒に対し次のような趣旨のことを言っていました。

もしこのレポート課題が「期日までに提出しなければ卒業できない」という種類のものであれば、きっと君たちは「バイトが忙しかった」「プリンタやパソコンが壊れた」などといった言い訳はしないだろう。バイトよりもこのレポートを優先しただろうし、機器が壊れて期日までに提出できない可能性があるのであれば数日前からしっかりとそれをチェックしてどうにかして提出できるように注意しただろう。
君たちがそうしなかったのは「このレポート課題が重要なものではない」と考えていたからに他ならない。提出できなかった理由を疑うことはないが、君たちのなかでこのレポート課題の重要度が低かったのだと受け取っている。

私が最初に書いた100万円の例と負けず劣らず極論ではありますが「人が何かを行うときにはそれを重要だと考えているから行うのであり、人が何かを行わないときにはそれはそれを重要だと考えていないから行わない」という意味では裏表の論であることはわかっていただけると思います。

このことは、私がグロース施策を考えるときに、常に頭に入れていることでもあります。

「快感」について考える

では、「ユーザに重要だと思ってもう」ためには何をすれば良いでしょうか?

最初の極論のような「お金で釣る」のは一番ダサい方法だと思っていますが、似たような形で割引やクーポンなどの金銭的メリットをアピールしている施策が多く存在しているとおり確実性が高い方法でもあります。

そのような金銭的メリットを押し出しにくい/押し出すことができない状況でも、他の方法はもちろんたくさんあります。

その際に考えるべきことは「快感」です。

人間は、本来的な報酬(食べ物、水、性行為、またはそれらの代替となるお金など)ではないものに対しても快感を感じる生き物です。

詳しくはこちら。
migi.hatenablog.com

快感回路---なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか (河出文庫)

快感回路---なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか (河出文庫)


人間は快感を得るために生きていると言っても過言ではありません。
「快感を得る」ことがユーザにとって「重要なこと」となるのであれば、我々が考えるべきことは「ユーザの快感」とも言えます。

快感の与えかたにはいろいろな方法がありますが、私がそのエサとしてよく使うのは「自己承認欲求」です。
ユーザ参加型のサービスであれば、そこで上手い感じに気持よくユーザが目立つような仕組みをつくっておくことで驚くほどみんな行動してくれます。

インタラクションの持つ意味

難しいことを考えず、もっと簡単な方法でユーザに快感を与える方法はあります。

いろいろなサービスやアプリで、ボタンを押したときや立ち上げたときにアニメーションを入れていることがありますが、それです。

「ボタンを押したときのインタラクションがなんとなく気持ち良いから」で人はそのボタンを押すことはありますし、「アプリを立ち上げるときの画面がなんとなく可愛いから」で人はそのアプリを立ち上げることもあるでしょう。

難しいことは考えずとも、こういった作りこみでもユーザの行動を促すことは可能だと考えています。

しかし、難しいことは考えずとも「なんのためにそのアニメーションを入れるか」はよく考える必要があります。

実際にあった話ですが、たとえば次のようなパターン。

あるサービスで、あるユーザが投稿した内容について他のユーザがTwitterでいうところのふぁぼを付けられる機能がありました。
ふぁぼを付けるときのアニメーションが非常に可愛らしく、これを見たいがためにふぁぼを押してくれるユーザもいるんだろうなと思っていたのですが、そこでは同時に「ふぁぼを解除するとき」にもステキなアニメーションがついていたのです。

そこについての私の意見としては「ふぁぼを解除するときにはアニメーションはつけずにただひたすらに無機質にもとの状態に戻したほうが良い」でした。

サービス提供者側からすると、ふぁぼ数はKPIでもありますし、KGIにも繋がる行動ですのでぜひユーザにおこなって欲しい行動です。逆に、ふぁぼ解除はできるだけやってほしくない行動です。
ふぁぼ解除のアニメーションを無くしたのは、それによってふぁぼ解除の数値が大きく上がりかねないと思ったからです。
(もちろん、ふぁぼを解除するときのアニメーションを可愛くすることで、サービスを使ってもらう上での長期的なメリットがあるというのであれば話は別ではありますが)

インタラクションやアニメーションをサービス内に入れることはよくありますが「なんのためにそれを入れるか=ユーザにある行動をおこなってほしいから入れる」ということはやはり抑えておくべきだと思います。

メリットを「伝える」必要性

そもそも、どのサービスもユーザに何かしらのメリットを提供するために作られているという前提にたつと、そこをしっかり伝えきれているか?ということも同時に考えるべきでもあります。

私も過去にソシャゲの開発・運用に携わっていましたが、やはりソシャゲのチュートリアルはその辺りが上手く作られています。
戦闘シーンなどが売りのゲームの場合は、その一番楽しめるであろう部分をチュートリアルの時点で最強デッキでド派手なバトルを見せておく、という手法をとっているゲームもよく見受けられます。

真に素晴らしいサービスであれば、その売り(「このサービスを利用することでこのようなメリットがあなたにありますよ!」)をしっかりと伝えることができれば、ユーザはきっとこちらの意図通りに行動してくれることでしょう。

まとめ

グロースハックの名のもとに、KPIをアップさせる方法としてネット上には「プッシュ通知を使う」「シェア機能を組み込む」などの多くの手法が紹介されています。

しかし、それらの小手先の手法を学ぶ前に、この記事で紹介したように「ユーザにメリットを感じてもらう」「ユーザに重要だと認識してもらう」「ユーザの快感をつくりだす」というような形で、しっかりとユーザのことを考えることが大事だと私は考えています。

走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)

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