『誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性』
またまた久しぶりのブログ更新。
最近読んだこの本がめちゃくちゃ面白かったのでその紹介。
誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性
- 作者: セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ,酒井泰介
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2018/02/15
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る
本の面白み
何が面白いかって、まず著者が面白い。
著者は以前、Google Trendsのデータをもとに論文を書いていたらしく、学会では「それを一次資料にするのはどうなん?」と言われたけどGoogleにその面白さをかわれてGoogleの中の人になったらしく。
根本思想としては「アンケートの結果って本当に信じられるの?みんな嘘ついてない?」というものがあり、Googleの検索行動の方が人間を分析するのに向いているのでは?との考えがあるようで。
政治の話から経済の話から、いろんな切り口でそのあたりの分析をしています。
という真面目な話はさておき、著者は性的な情報の分析もしていて。
そもそも、著者はこの本のタイトルを『僕のペニスの大きさは?グーグル検索が教える人間の本質』にしようとしていたらしく。
編集者に止められたらしいけど。
頭おかしい(褒め言葉)
実際、本の中で性的なデータの分析の話をしているときのこの著者のテンションがすごい。
そして男がオーラル・セックスについて調べてるときには、それはえてして相手をどうやって悦ばせるかではない。男は女性をイかせる方法と同じほど自分にフェラする方法を調べている(これはグーグル検索データをめぐる私が最も好きな事実だ)。
膨大なデータを分析してきたはずなのに「最も好き」なのがそれで良いのかと。
頭おかしい(褒め言葉)(二度目)
あとは、みんな大好きPornhubの検索データ分析もあるよ!
この前もPornhub公式からデータが出ていたけど「女性がどんな検索をしているのか」とかのお話が。
人の「行動」を見るということ
性的な話が続いたのでちょっと真面目な話を。
本の内容をしっかり読めば、著者は「検索データを見る」ことを重要視しているのではなくて「人の行動」を重要視していることがわかります。
アンケートの回答では人は嘘をつく可能性はあるが、行動は真実を表す。
実はこのことは私の仕事にも繋がっていまして。
大昔の記事でも書いたけど、私は「人の行動をデザインすること」を生業にしていると考えています。
そこで重要なのはやっぱり「人の行動」であって。
もちろん、アンケートやユーザインタビューを行ったりそのデータを見たりすることもありますが、それを鵜呑みにはしないようにしています。
私が一番重要視するのは「ユーザがどういう行動をとったか」というGoogle AnalyticsやBigQueryなどの行動データであって。
例えば、とあるサービスに何かしらの改善を行ったとして「こんな新機能いらない!改悪だ!」という声が上がったとしても、ユーザ全体では理想的な行動に近づいていることはままあります(もちろんGoogleAnalyticsなどの数値には短期的には出てこない価値もあるのでそこには注意が必要ですが)。
大昔にソーシャルゲームの運営をしていたときは特にこれは顕著でしたね。
レビュー欄は大荒れでもDAUと売上はめちゃくちゃ伸びていたり。
このあたりの根本的な考え方(と性的な話の面白さ)のために、この本は個人的にかなりクリティカルヒットでした。
素直に面白い。
また、単純に面白いデータだけではなく、
親は「私の娘は才能がある?」より「私の息子は才能がある?」のほうを2.5倍も頻繁に検索している。
と言ったような衝撃的な事実も載せられていたりします。
女の子よりも男の子のほうが親から期待されて育つ。
女性差別はこのレベルからも発生しているのか、という驚き。
アンケート調査で「娘よりも息子のほうが嬉しい?」みたいな質問をしても無難な回答しか出てこなさそうなことを考えると、これも人の行動を分析して初めて見えてくる事実の一つだな、と。
データ分析の倫理性
最後に。
この本では最終章をまるまる使って「やってはいけないこと」として、データ分析(とその利用)にまつわる倫理的な話が語られています。
データまわりの本はいろいろと読んでいるつもりですが、これに触れている本はこの本が初めてだったのでけっこう衝撃的でした。
ウェブサービスまわりで働いている人にはぜひここは呼んでもらいたいところ。