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グロースをデザインするひと

新作ボドゲ『Dead beside Decoy(デッド・ビサイド・デコイ)』制作ノート

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春に制作した『Assassin's Criris(アサシンクライシス)』に引き続き、ゲームマーケット2020秋にも新作『Dead beside Decoy(デッド・ビサイド・デコイ)』を出します!
dbd.migi.site


前作『Assassin's Crisis』についての記事はこちら。
migi.hatenablog.com


今回はどんな感じでこのゲームを制作したのかをつらつら書いておこうと。

作品コンセプトについて

新作『Dead beside Decoy』の概要はこんな↓感じ。

殺人鬼vs生存者の非対称型対戦ゲーム!
生存者の心理を見抜き、皆殺しにできるか!?
殺人鬼の裏をかいて、脱出できるか!?

タイトルやこの内容から分かる通り、有名なあのデジタルゲームを参考にしています。


私はもともとあのゲームが大好きで。
最近はあまりガッツリとはプレイできていませんが、全パークを取得したプレステージ3のサバイバー・キラーを作ったり、一時期はサバイバー・キラーともにランク1をキープしてたり。
ちなみに一番好きなキラーはピッグです(『SAW』がそもそも好き)。

さて、そのあのゲームですがSteamの掲示板などで数年前からボドゲ化を考えている人たちはちょこちょとおりまして。

私も楽しみにしてちょこちょこと情報を追っているんですが、一点だけずっと気になっていることがありまして。


それは「あのゲームの面白さをすべてボードゲーム上に再現するのは無理なのでは?」ということです。


そもそもあのゲームは「情報非対称ゲーム」という性質を持っています。(将棋などと違って相手の情報はすべてはわからない)
上記のツイートの画像のように「ボード上でサバイバーを動かす」ようにすると「その動きはキラーからは見えない」という仕組みも必要になってしまい、それを両立させようとするとかなり複雑な仕様が必要となりそうです。


そこで私が考えたのは「あのゲームのコアな面白さだけを抜き取って、そこをシンプルに楽しめるゲームは作れないか?」ということでした。


私は、あのゲームのコアな面白さを「サバイバーとキラーの読み合い」だと考えています。

もちろん実際のあのゲームだとチェイスなども含めてアクション性は必要なのですが、個人的にはあのゲームを楽しさとしてそこにあまり重きを置いていません。
(旋回避けとかも「ゲーム性を損なっているのでは?」と思うぐらい)

それよりも

  • チェイス中にまっすぐ追うのか裏をかいて反対側からまわりこむか
  • サバイバーを吊った後にそこにキラーが待っているかそれとも索敵に行ったか
  • 負傷したサバイバーがどこかで回復しているのかそれともそのまま修理しているのか

といった点に面白さを感じています。

超シンプルに「サバイバーとキラーの読み合い」という点だけに特化して、自分が「あのゲームはここが面白いんだ!」という点を抽出したゲームが作れないかというのが『Dead beside Decoy』の狙いです。

余談

実は、前作『Assassin's Crisis』も似たようなところからゲームを作っています。

また別の某有名ゲームの昔のシリーズにあったマルチプレイモードが大好きで、あれをなんとかアナログゲームにできないかというところがスタート。

こんな感じのゲーム性。
www.youtube.com
自分も含めてプレイヤー全員が暗殺者で、自分のターゲットを暗殺しなきゃいけないけど自分も誰かのターゲットなので目立つとほかの人に殺されてしまうというジレンマを楽しむゲーム。


けっこう好きでやり込んでた記憶があります。
これを久しぶりにやりたいけどハードもウチにはもうないし、たぶん人もいないしでもうプレイできないのが悔しくて。

そこで作ったのが前作『Assassin's Crisis』でした。


既存のゲームの面白さを分解してボドゲとして再構築していくのは、それ自体がパズルゲームをやっているようで楽しいですね。

もう一作『Death Stockpiling(仮)』という、また何かっぽいゲームも構想中なのでそれも発売できると良いな……。

制作過程について

ルール制作

私がゲームを作る際に最初に考えるのは「プレイ中・プレイ後にプレイヤーにどういう感情を味あわせたいか?」ということです。
このあたりはメインのお仕事でウェブサービスの改善や新規制作をやっているときとまったく同じような感じですね。

今回は先述のようにあのゲームと同じような面白さを味あわせたいということもあり、生存者側には「自分が襲われるかも知れない!というドキドキハラハラを感じさせつつ、成功したときには安堵感と脱出したときには勝利の余韻」を、殺人鬼側には「相手の意図を読みきった気持ちよさとともに相手を痛めつける加虐感」を得られるようにしたいと思いました。

そこで思いついたのが作品タイトルにも入っている「デコイ(おとり)」というキーワード。

生存者側は自分の本体とおとりを使い分け殺人鬼に選択を強いるとともに、殺人鬼は相手の心理を上手く「読む」ことが必要となります。


ここまで思いついてしまったら、あとはルールに落とし込みつつ「いかに面白くするか」という点をまとめていくだけです。

アルファ版制作

ルールとしてまとめていく際にはテキストの形で実際の文章を書いていくと同時に、どんなカードが必要なのかを情報カードにマジックペンで書きながら考えていきます。

情報カード 無地 名刺サイズ J884

情報カード 無地 名刺サイズ J884

  • メディア: オフィス用品

安いので書き捨てられるし、最低限どのような情報がカード上に必要かを考えるのにはこれで充分。

出来上がったルールブックとカードを見つつ、プレイに支障をきたす要素や齟齬がないかを頭の中で確認し、修正を加えていきます。

ベータ版制作

ただ、点数計算をしっかりしていくようなゲームだとともかく、私が作るゲームが毎回心理戦系ということもあって実際に人とプレイしてみるまでは「このゲームは本当に面白いのか?」どころか「そもそもゲームとして成り立っているのか?」ということもわからないため、ここが一番怖い段階です。

それを解消するためにもいろいろな人に実際にテストプレイしてもらってます。

ルール制作段階で使った情報カードはペラペラで裏表が透けて見えてしまうため、テストプレイではこのカードをよく使っています。

上記の情報カードよりはちょっとお高いですが、表にマジックペンで好きな情報を書けるしカードとしても意外としっかりしているしで使いやすい。

これを使ってテストプレイ。

毎回テストプレイに付き合ってくれる嫁や友人たちには大感謝です。


前回も今回も、初のテストプレイ時点で先述の「面白いか?」「ゲームとして成り立っているか?」については別に問題はなくかなりホッとしました。

それでも、テストプレイを重ねることで「もっと面白くできる方法」や「ルールでわかりにくい点」、「ルールで明確にしておいたほうが良い点」などが出てきてそれを組み込んでいきます。

実は、最初のテストプレイの際には製品版では入っていない「キラーがサバイバーをフックに吊るす」「サバイバーが負傷状態を回復できる」といった仕様が入っていました。
逆に製品版には入っている「キラーが発電機を破壊する」という仕様は入っていませんでした。

フックに吊るす仕様は先述の読み合いの要素を生むためどうしても入れたいと思っていたんですが、テストプレイをしてみてゲームのテンポが悪くなるだけということに気付かされました。
負傷状態の回復も同じくそうで、ゲームを無駄に長引かせることになるためにオミット。
また、「キラーが発電機を破壊する」という仕様がないとサバイバーはすべての発電機を直し切るメリットが減ってしまうためすべての発電機を少しずつ修理する、という行動に出てしまうため追加しました。

自分でゲームを再構築していると、元のゲームに入っていた仕様とその製作者の意図についてあらためて考えさせられ、かなり面白かったところでもあります。

カードデザイン制作

何度かテストプレイを重ねてルールが固まってきたらデザインの制作を進行。

私は自分でビジュアルデザインをするのは苦手なため、前作『Assassin's Crisis』と同じく仕事仲間のmaasaに依頼しました。

いつもの仕事と同じように、いちおう自分で作ってみた必要カードすべてのラフデザイン一式とイメージボードを渡して「良い感じにしてくれ」とラフに依頼。
そして作り出させる私好みの最高のデザイン。最高すぎる。

今回は追加で、どうしてもキャラクターのイラストを使いたかったのでキャラクターデザインをやってくれる人も探してまして。
思いついたのがむかし手伝っていた会社で知り合ったserikiyo

こちらも「こんな感じのやつが欲しい!」という依頼に対して、私が思っていた以上に私の趣味ど真ん中のものが上がってきて大満足。

2人の力が合わさって、最高のカードデザインに仕上がっています。
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そして印刷会社は前作と同じく盤上遊戯製作所さんに。
boardgamemill.jp
やりとりもスムーズですし、何より前作『Assassin's Crisis』で思い知らされた出来上がりのクオリティの高さ。

今回はお願いする際に一度ハングアウトミーティングで印刷についての細かい相談に付き合っていただけたのは本当に助かりました。
コロナ禍が落ち着いたら、ぜひ愛知にある製作所にも遊びに行ってみたいところです。

まだ印刷中で手元に製品は来ていませんが、めちゃくちゃ楽しみ。

最後に

という感じで制作してきた『Dead beside Decoy(デッド・ビサイド・デコイ)』は来月11/14(土)、11/15(日)で開催される「ゲームマーケット2020秋」で販売予定です!

今回もまたAmazonでも販売する予定ですが、ゲムマ会場のほうで買うとちょっとお安くなっているのでぜひブースに来ていただければと!

MIGIというサークル名で両日エリアD06にて皆さまをお待ちしております!
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今回は気合を入れて5m×5mという広いスペースでの出展。
一人暮らしのお家より広いのでは……。

キャラクターデザインを担当してくれたserikiyoがブースデザインもかなりがんばってくれてるのでぜひ一目見ていただければと!
ちょうど出口のそばだし、お帰りの際はぜひお寄りくださいませませ。


取り置きフォームも用意しておりますのでこちらもぜひ!
forms.gle


あと、Twitter本垢とは別にボドゲ用のアカウントを作りました。
今後、ボドゲまわりの情報はこちらでツイートしていこうかと。
twitter.com

11/1追記

盤上遊戯製作所さんから印刷サンプルが届きました。
相変わらず、クオリティが高くてテンションが上ります。多謝。
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11/17追記

ボドゲーマとAmazonでの販売が始まりました。
ゲムマでゲットできなかった方&ゲムマ後にレビューを見て気になった方はこちらからぜひ!

Amazon

デッド・ビサイド・デコイ Dead beside Decoy

デッド・ビサイド・デコイ Dead beside Decoy

  • メディア: おもちゃ&ホビー