it's an endless world.

グロースをデザインするひと

『Dugong』ANTIBODIES

ブログを復活させたことだし、久しぶりにダンスの公演の感想も書こうかと。


昨日、いま横浜で行われている大野一雄フェスティバル2015のプログラムの一つ、ANTIBODIESのワークインプログレス上演『Dugong』を観てきた。

ANTIBODIESについて

この「ANTIBODIES」は私が一番好きなダンスカンパニー「Baby-Q」を前身としていて、その主催である東野祥子さんが今年立ち上げた新しいカンパニー。

ここしばらくダンスのレビューは全然書いてなかったけど、過去にそのBaby-Qの作品のレビューは何回か記事を書いてたみたい。

『GEEEEEK』 - it's an endless world.
『いつだって目は開けていたい。』 - it's an endless world.
BABY-Q『[リゾーム的]なM』 他 - it's an endless world.
ダンス三昧 - it's an endless world.

その身体の使い方の技術的な部分も好きだし、その産みだす作品の方向性も大好きだしで、東野さんは本ッ当に大好きなダンサーさんです。
東野さんが昔言っていた「世界の皮をめくったその裏側にあるものこそが美しい」という言葉の美しさも。


BABY-Q promo movie - YouTube

公演の感想

とりあえず、終演後はこんな感じでした。

誇張抜きで。
ダンス作品観た後にこうなるの久しぶり。と言うか二度目。

公演が行われた場所は日本郵船の昔の倉庫をリノベーションして使われているBankART Studio NYK
前にもここにBaby-Qの公演を観に行ったことあったけど、良い場所。元が倉庫だっただけに分厚いコンクリで覆われた、広いのに不思議な閉塞感がある空間。

今回はそこでのインスタレーション作品。

Baby-Qの作品では、その舞台美術も力が入っていて作品の世界観を作り出す大きな要素の一つになっているんですが、今回はひときわ大規模な造形物が空間の中に所狭しと配置されていました。

その空間で各々で動き続ける、一定の動作を繰り返す女性、叫びながら服を放り捨てる女性、着物を着て折り紙を作り続ける女性、軍服の男性、おかめ面で佇む女性、(ほぼ)全裸の男性、ドレス姿の長髪の女性、その他多くのダンサーさんたち。

ダンサーさんたちそれぞれの身体は交互に繋がりは持たず、好き勝手に自分の時間を表現していましたが、後半に向けて徐々に繋がりが強くなっていき、最後には同一の時間の中での表現に。

作品の公式のディスクリプション。

効率が生活の一部始終を支配する加速の世界
私たちは光速ネットワークで構築された閉域を忙しく行き交う
時間のかかる政治的プロセスは不可能に近づき
絶え間ない安全と平和への欲求は 
いつしか殺人兵器となって私たちに手渡される

いま事象の地平線を一頭のジュゴンが漂っている
消えかかった蝋燭のように揺れるその遺伝子がみえる
依拠する場所を失って砂塵のようなデータの中に消えていく
私たち自身の姿のようでもある

舞台は時間の反加速装置である
そこで私たちは行為という始原的な場所に立ち返り
難民となって「囲い」の外へ向かう
存在の極限を漂流する生命のひたむきな「いま」の中へ

外出禁止令の刻限はとうに過ぎている

ダンス作品のディスクリプションは正直いつもイマイチわからんのですが、この中の「時間」というキーワードにはしっくりきました。

各ダンサーさんたちそれぞれの動きを同時に観ていると、自分の中での「時間」の感覚が徐々に曖昧になっていき妙なトリップ感が。
しかし、あらかじめ伝えられている上演時間である50分が、舞台美術に紛れて空間内にプロジェクタで残り時間のカウントダウンという形で表示されていたため、そのトリップ感と刻まれる時間の現実感を脳内で行ったり来たりでさらに不思議な感覚に。

感想まとめ

ダンス作品を観たときに「作品は素晴らしかったけど、ダンスを観た気にはならない」ってことも多いんですが、ダンサーさんの動きそのものを通して伝わってくるものが大きかったせいか今回の作品はかなりしっかりと「ダンス」を魅せつけられました。
引き込まれる。惹き込まれる。

ダンサーさんの身体を入り口に、作品空間全体に引き込まれ、その上で東野さんが表現しようとしているものに惹き込まれた」というのが今作のシンプルな感想かなと。


今まで観た作品以上に完成度が高いなと思っていたら、終演後に東野さんと話している時に「美術系のスタッフが関西に多いからBaby-QからANTIBODIESになって本拠地を関西に移して、向こうでじっくりと作品を詰めれるようになった」という言葉が。

観に行ったのは夜の回だったけど、昼の回に行ってたら絶対にもう一度お金を払って夜の回も観ていたと思う。

前述の通り、残り時間が空間内に表示され刻一刻と終演が近づいているのを見て「もっと観ていたい!終わらないでくれ!」という気持ちがどんどん強くなっていたし、客席と舞台の境目がなくオーディエンスが自由に空間を歩き回るインスタレーション作品の特性上「その作品の全てを味わう」ということが無理だったし。


なんか、東野さんとお話するときにいつも緊張しすぎて自分の気持ちをうまく伝えられないので、この文章が東野さんの目に止まってくれると嬉しいな。