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グロースをデザインするひと

『赤ずきんは眠らない』にみる「人の気持ちを考える」ということ

これはボドゲ紹介 Advent Calendar 2015の記事です。

昨日はaibouさんの「ライナー・クニツィアのキングダム」のお話でした(が、まだ上がってないみたいです)。

今回は『赤ずきんは眠らない』というゲームを紹介したいと思います。

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ゲームのルール

詳細はすごろく屋さんのこちらの記事がわかりやすいかも知れません。

ゲームの勝利条件は「勝利点を10点集める」ことです。

勝利点をゲットするためには次の3通りの方法があります。

  1. (自分が狼の場合)寝ている他プレイヤーを食べる
  2. (自分が狼以外の場合)狼にトラップをしかけてはめる
  3. (自分が狼以外の場合)狼が他のプレイヤーを襲っているあいだに寝ている

もっと詳しく見ていきましょう。

このゲームでは「」とそれ以外という大別して2種類の役割があり、後者はさらに「赤ずきん」「親ぶた」「子ぶた」に分けられます。
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毎ターン、狼以外のプレイヤーはそれぞれ、狼に見られないように「おやすみなさい」「トラップ」というカードのどちらからを目の前に伏せて出します。
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その上で、狼はそれ以外のプレイヤーだれか一人を指名して襲います。
その結果として、先ほどの勝利点の説明にあった点数が発生します。1と2では相手から点数を奪う形になります。

獲得できる点数は対象によってそれぞれ違い、赤ずきんは3点、親ぶたは2点、子ぶたは1点となります。

じつは、この役割は毎ターン変わっていきます。
「狼に食べられたプレイヤー」あるいは「トラップにはまった狼」が誰が何の役になるのかを決定する権利を持っています。

ゲームの面白み

まずは、狼とそれ以外との直接的な心理戦があります。

狼が自分を襲うつもりであれば「トラップ」を出せば良いし、他の人を襲うのであれば「おやすみなさい」を出せば良い。
このシンプルな2択に非常に頭を悩ませられます。

特に悩むポイントとなるのは考えるべきなのは、狼以外の配役。
自分が「赤ずきん(3点)」の場合は狼から一番狙われやすいように思えます。「子ぶた(1点)」であれば襲われる確率は低そうです。
でも実際は、狼もそれを考えているはずです。「ウラをかいて実は……」と考え始めるとブラフ系ゲームにありがちな状況に陥ってしまいます。

その迷いを持ちつつ「あいつは本当はこう考えているはずだ!」と決定を下す瞬間がこのゲームの楽しいところだと思います。
その考えがうまくいき狼をみごとにトラップにはめられたときは、相手のすべてがわかってしまったかのような全能感に陥ってしまったりも。言い過ぎですが。

ターンを進めるごとに、まわりのプレイヤーの考え方のクセが見えてくるのも楽しいところです。
負けたプレイヤーが自分で役を選ぶときに自分にハイリスクハイリターンな役である「狼」あるいは「赤ずきん」を配る姿をよく見ます。その結果、同じ失敗を何度も繰り返して、結局は無難な役を自分に配り始めるというシチュエーションはこのゲームのあるあるです。完全にまわりから気持ちを読まれてしまっている状態ですね。

慣れてくると「あいつはこう考えているから」だけでなく「あいつはこいつのことをこう考えているから」まで考えぬく必要性もある奥深いゲームだと思います。

このゲームから学べるもの

先日、このゲームを小学校3年生の子どもたちと一緒に遊ぶ機会がありました。

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「クリスマス会で何かボードゲームを教えてほしい」というリクエストがあって持っていったのがこの『赤ずきんは眠らない』でしたが、これを選んだ理由はルールのシンプルさだけではありません。

学校では教えてもらえない、しかし人生において重要なことを子どもたちに学んでほしいと思って選びました。

以下、ちょっと長くなりますが自分の思いをつらつらと。

「人の気持を考えなさい」

誰しも子どものころから、親や教師に「人の気持を考えなさい」と教えられていたと思います。自分もそうでした。

でも、この言葉には私は昔からなんとも言えないやりきれない思いを抱いていました。

初期のカイジ利根川のセリフでもありましたが、このゲームで勝つためには「本当の会話」とでも言うべき、普段の日常的なコミュニケーションとは段違いの「人の気持を考える」ことが要求されます。

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また、同時に「嘘をついてはいけない」とも教えられてきました。しかし、そう言っている親や教師も含めて実際のところは世の中には嘘をつく人たちばかりです。嘘をつかない人なんてほぼいないぐらいだと思います。
その中で必要なのは「相手が嘘をついている」ことを見抜く力ではないでしょうか。そしてそれは「人の気持ちを考える」ということに直結しています。

思い込みと信頼

「相手は嘘をついていない」と思い込むことは簡単です。
ただそれは「相手の気持ちを考える」ということの対極にあるでしょう。

相手の気持ちを考えたうえで、相手のことを信頼する。それが大事だと私は考えています。
もちろん、相手のことを信頼して「こいつはトラップを仕掛けている」と考えることもありますが。

まさか、学校の授業で「相手の嘘を見抜く」ことなんて教えられないけど、ゲームだったらそれができる。
これがゲームの楽しさの一つでもあると思います。

まとめ

最後に語ったようなことはブラフ系のゲーム全般でも言えるようなものですが、この『赤ずきんは眠らない』の魅力はシンプルなルールとかわいいコンポーネントの中にその「毒」を隠しもっていることにあります。

一度プレイしてみれば「人の気持ちを考える」ことの難しさに気づけると思うので、未プレイの方はぜひプレイしてみて欲しい作品です。

赤ずきんは眠らない (Eat Me If You Can.) カードゲーム

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  • 発売日: 2015/11/14
  • メディア: おもちゃ&ホビー

明日はnon_wash_rice_2さんの記事になります。
http://non-wash-rice.hatenablog.com/entry/2015/12/24/024430non-wash-rice.hatenablog.com

おまけ

本日は実は、ほかのアドベントカレンダーにも記事を投稿していたりします。
興味がある方がいましたら、こちらも合わせてどうぞー。
migi.hatenablog.com
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ちなみに、なんでこんな一気にアドベントカレンダーの記事を上げているかというと、今日が私の誕生日だからです。
ということでこちらも貼っておきますね。
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