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グロースをデザインするひと

『屍者の帝国』伊藤計劃×円城塔

屍者の帝国

屍者の帝国

早逝した伊藤計劃がプロローグだけ書いて遺作となってしまっていた『屍者の帝国』を円城塔が引き継いで完成させた作品。
去年あたりに円城塔が引き継ぐって話聴いた時から「完成した作品として読める!」という嬉しさ半分、「円城塔かー」という不安要素半分で発売の日を待ってました。


読んでみて、伊藤計劃が『虐殺器官』『ハーモニー』で取り組んでいたテーマそのものな作品にちゃんとなってることにまず驚き。自意識、言葉、進化。話の背骨となっている部分がしっかり伊藤計劃*1


そんな感じの相変わらずの哲学SFっぷりだけど、物語自体も単純に面白く一気読み。
よくいう「たった一箇所だけウソを入れて、それ以外は徹底的にリアリティにこだわる」というSFの鉄則どおり。19世紀後半の実在の歴史上の人物出まくりで、実際の世界とこの作品の世界の交差点として機能してたかと。


流行りの「哲学的ゾンビ」な話もできる作品なんだろうけど、オレがそこは疎いんでやめときます。


エンディングで、世界的な有名な某作品の世界に物語を落としこむのも上手いなー、と。主人公の名前と時代と舞台を見れば最初っからバレバレっちゃバレバレですが。



今はもうこの世に存在しない伊藤計劃が、それこそ「言葉」として蘇ったかのような作品でした。

*1:どうでも良いけど、基本ハードな作風なのに「下着ではないから恥ずかしくない」とか台詞を入れてくる伊藤計劃っぽくさも。ビミョーな気持ちになる。。