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グロースをデザインするひと

『臓物大展覧会』

臓物大展覧会 (角川ホラー文庫)

臓物大展覧会 (角川ホラー文庫)

小林泰三さんの新刊。あまりの面白さに一気に読み終えてしまいました。
以下、ネタバレ回避しつつちょっとだけ感想を。


●透明女
かなりグロ度が強め。自分の身体を解体する女性の描写がえんえんと20ページくらい続いたり。ホラー度も高めでかなりゾッとできます。秀作。
●ホロ
SF。AR(拡張現実)とか知覚とかの話。喫茶店で対話する男女、という構図は『玩具修理者*1』を思い出します。
●少女、あるいは自動人形
人間って何よ?的な話。人と人形の対比の話。
●攫われて
幼女を痛ぶるシーンも良いのですが、メイン部分が思いっきりミステリw
●釣り人
はじめの一文「僕はエヌ氏とそれほど親しいわけではなかった。」で容易に想像できる通りの星新一っぽい作品。ショートショート。バランス難しいだろうけどもうちょっと小林さん臭さがあった方が好きだったかも。
●SRP
まっとうなSF作品と見せかけて戦隊ものコメディ作品と見せかけて実はやっぱりしっかりとしたSF作品。途中のおバカなノリの小林さんも好き。
●十番星
ちょっとだけクトゥルフっぽい。
●造られしもの
人間って何よ?的な話その2。人とロボットとの関係性の話。ロボット三原則を踏まえつつ。痛覚を持ったロボットを破壊するシーンは素敵でした。
●悪魔の不在証明
論理学の教科書みたいな話を読んでたはずがいつの間にか死姦してた。


前作の『天体の回転について*2』がかなりピュアでクリーンなSFものだったんで、今回のタイトルと表紙を見たときは反動で凄いことになってないかとwktkしたのですが、思ってたよりグロ度もホラー度も低めでした。「透明女」を除いて。むしろ「透明女」のインパクトが強すぎて感覚おかしくなってる可能性も。普通に勤め人しながらこんだけ常軌を逸した作品を書けるのは凄いと思います。


あと、実は上記作品以外にもプロローグとエピローグがついていたので『海を見る人*3』のときのようなサプライズを少し期待したのですがそれは無く。


正直言うと、大好きな小林泰三さんの作品、としては個人的にはもう一押し欲しかったところでした。
ホラーとしてもSFとしても十二分に楽しめる内容でしたけど。

*1:玩具修理者 (角川ホラー文庫)

*2:天体の回転について (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

*3:海を見る人 (ハヤカワ文庫 JA)